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Q: 40才で結婚しすぐ体外を始めましたが思うように進みません、鍼灸で体は良くなりますか。

Q: 

 40才で結婚しすぐに体外をスタートしました。私の場合は、ホルモン療法を行い排卵誘発剤を使用したのでいくつか卵子が育ち毎回凍結もできましたが、移植した後なかなか着床まで進まないのです。

もうそろそろ二年になるのですが、この先妊娠できるのかどうかを考えるととても心配です。あと自分では気が付かないけれど、どこかに不調があるのか? 健康な体なのかな? など考えてしまい、いろいろ不安になって落ち込む時も多くなりました。

鍼灸や漢方で体を強くしたいし整えたいと思っているのですがどうでしょうか。

(みどりさん 41才)

 

 問診と所見から:

  ●若い頃から高温期が短い(9日前後)

  ●月経血が少なくて赤黒く塊が大きい

  ●睡眠時間が短い

  ●子宮筋腫がある

  ●時々急なほてりが起る

  ●あごと背中の吹き出物が多い

  ●やる気が起らない

  ●甘いものがやめられない

  ●お血の所見あり

 

A:

 妊娠が成立するには大きく「ホルモンバランス」「卵巣と卵子の状態」「子宮と着床する力」この3つが大切です。これらは単独で働くのではなく、五臓六腑の調和、上位中枢からの指令、自律神経が協調して働いて子宮と卵巣に気血が充分巡ることで安定した母体がつくられると言われています。

年齢が高くなればそれだけ妊娠が難しくはなります。卵巣に残っている卵子の数も少なくなり若い頃に比べると質も低下するからです。ただ、みどりさんの場合は、卵もある程度取れて分割し、移植までは進んでいるので、まだ妊娠する可能性は充分あると確信はしていました。

 

 カウンセリングや所見から、緑さんの場合「血熱血お」の症状がとても気になりました。「お血」の症状として、情緒不安定・のぼせ・肌あれ、不眠、イライラするなどがありますが、さらに慢性化すると「熱」が発生してしまい様々な悪さをします。この状態を「血熱血お」と言い、体が熱くなるだけでなく、交感神経を興奮させて、生殖器系では、子宮の環境に影響したり良い卵子を育てる力が低下してしまうなどとも言われています。そのため、みどりさんの場合最初に ①「熱」を取り除く施術を行いました。

 また「静則生水」と言う言葉がありますが、良質の卵胞は、時間をかけてゆっくりと良い環境で育つことも大切です。良い水(≒痰湿)は「子宮内膜」「卵胞ホルモン」にも関与している事から、血流量が増加する2次卵胞の時期から特に気血水の巡りを整えてよい状態で保持する事も、さらに受精率や着床率に大きく関与しているのではとも考え、みどりさんの場合、②五臓六腑の中の「不調が現れているツボ」と相性の良い婦人科系に関する「ツボ」を組合わせた鍼灸施術を半年以上かけて定期的に行ないました。

 

 生活習慣からは、十分な睡眠が取れていない事が気になりましたので、眠りの質に関係する「③不眠のツボ」の施術と、日中は、意識して体を動かす機会を持って上手に汗をかく事、熱がこもりやすい体ですので甘い物を取り過ぎないようにする事、水分の補給を忘れないようになども指導しました。 

 

 全身鍼灸としては、④気をめぐらす事と、寒熱バランスの調整、肝気を整えて精神的なストレスを緩和する事、を目的に行いました。

 

 

最後に

 

 鍼灸はお一人お一人の体調に合わせて組み立てますので、今回は、①~④までの施術を、体の変動に合わせてその都度選択しました。

 みどりさんの場合は「血熱」の症状が強かったので、寒熱バランスを整えるのにだいぶ時間がかかるのではと診断しておりました。しかし、ご自身でも、食生活と生活習慣をきちんと見直して積極的に健康な母体作りに取り組まれていたので、思っていたよりも比較的早い段階で「体質改善」1 の兆候がみれれるようになりました。その後、約半年かけて全身からの施術を中心に行い、約一年後に「妊娠判定」、その後無事出産されました。

 1 一般的に東洋医学では、体の細部が生まれ変わり入れ替わるまで、3ヶ月~1年以上はかかると言われています。

以上